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2022年IT企業の新入社員向け配属後調査

2023.02.03


アイティ・アシストでは、私どもの新人研修を受講したIT企業の新入社員を対象にアンケート調査を行い、配属後に役立った研修や自分に足りていないと感じるもの、採用時にイメージした仕事とのギャップなどを伺いました。5年目になる今回は、5年前との比較もしながら調査結果を比較しています。
2022年度の新入社員研修は、新型コロナの影響が続くなか、対面、オンライン、ハイブリッドと様々な形式で実施いたしました。その研修が終了して、配属約3ヶ月が経過した時点で、新入社員の皆さんに各種状況をご回答いただきました。


≪調査概要≫

  • 調査期間:2022年10月3日~2022年12月29日
  • 調査方法:選択式/自由入力式
  • 調査対象:アイティ・アシストの研修を受講した2022年度入社の新入社員
  • ご協力いただいた企業:15社
  • 対象企業規模(社員数):
    ~  300名 3社
    300名 ~ 1,000名 7社
    1,000名 ~ 2,000名 1社
    2,000名 ~      4社
  • 対象者:549名 有効回答373名(67.9%)

 



Q.配属後に役立った研修を教えてください。(複数選択式)



3年連続”ビジネスマナー“がもっとも役立っている

新入社員研修を振り返って、もっとも役立っていると回答があったのは「ビジネスマナー」でした。これで3年連続です。
それ以前は「システム開発演習(チーム)」が連続1位だったのですが、コロナ禍後はビジネスマナーが毎年1位になっています。回答率は52.8%と2人に1人が「役立った」と評価しています。

新型コロナの影響で学生時代に人と接する機会が減り、さらに就職活動の中心がオンライン化したこともあり、本来は様々な機会から学ぶマナーについて、新入社員研修で初めて学ぶことが多かったのでしょう。配属後出社する機会が比較的に多い新入社員は、研修で学んだマナーを現場で役立ててくれているようです。

次には「システム開発演習(チーム)」と「プログラミング」が挙がりました。
システム開発演習(チーム)は昨年度から対面形式に戻す企業が多く、その評価が上がり、昨年と同じ2位となりました。やはりチームメンバーと協力して、ひとつのシステムを作り上げる開発のプロセスは、現場でも活かされているようです。
また、プログラミングも昨年と同じ3位で高い評価を得ています。私どもが担当する企業では、ITの初学者の割合は年々増えている背景もあるのかもしれません。

その他、本年度も評価が高いのは「研修運営プロジェクト」です。 すべての企業で実施している施策ではありませんが、23.9%でトップ7に入りました。このプロジェクトはアイティ・アシスト独自の施策で、新入社員に研修の運営を任せ、その経験のなかで主体性や仕事の進め方を身に付けていただくものです。本年も対面、オンライン、ハイブリッドと様々な形式のなか研修運営に取り組んでもらい、育成担当者やコーディネーターからのフィードバックを通して、成長する姿が見られました。

2021年の配属後アンケートはこちら




Q.配属後、自分に足りていないと感じるものは何ですか?(複数選択式)



やはり「文章力」が足りていない

これで「文章力」は4年連続トップになっています。やはり現場で文章を書くことに苦労している新入社員が多いようです。SNSを使った(スタンプだけで成り立つ)コミュニケーションで育った新入社員にとって、メールや議事録、設計書など様々な場面で文章力が求められるビジネスの現場は大変なのでしょう。さらに、テレワークが増えている環境もこの割合を押し上げているのでしょう。最近ではチャットを導入している企業も多く、ツールにあわせた文章力が求められています。
そのような背景から新入社員研修中や配属後のフォローアップ時に、私どものビジネス文書(議事録や報告メールなど)の添削サービスを利用されるお客様が増えています。

担当者向け文章力強化についてはこちら



次に足りていないと回答があったのは、「ネットワーク」でした。昨年から5%以上伸びて2位に入りました。一昨年からだと10%以上の伸びになります。これはテレワークでのネットワーク接続や、クラウド環境での開発や運用が影響しているのか、注目すべき数字です。 あわせて「インフラ」も昨年から3%以上伸びて、32.2%の8位に入っているのにも関係がありそうです。

3位は「プログラミング力・ロジック構築」で昨年から順位を1つ下げましたが、それでも3割弱の方は、現場レベルのプログラミング力にはまだまだスキルアップが必要と捉えています。IT初学者の採用が増えている現状では、約3カ月間の研修期間で基礎を身に付けるところまでがやっとです。現場配属後も先輩による指導や勉強会の開催、自己学習によってプログラミング力の向上を図っていただけたらと思います。



コロナ前とコロナ禍による違い



それではここで5年前の配属後調査と比較してみましょう。まだ新型コロナの影響がなかった2018年度の「足りていないと感じるもの」を本年度と比較して増減の大きかった上位5つずつを挙げてみました。
※ちなみに2018年はサッカーW杯ロシア大会、安室奈美恵引退の年ですね。



足りていないと感じるもので2022年度の方が高くなっている項目で目立つのが、「チャレンジ精神」と「主体性・積極性」です。この2つが高くなっている理由は何でしょうか。 私どもの仮説になりますが、テレワークが増える環境下では、新入社員は指示待ちになりやすく、そのためこの2つに課題を感じているのかもしれません。任された仕事はこなしますが、それ以外の仕事をみずから取りに行く、先輩に新たな提案をしてみるというのは、目の前にいればできるかもしれませんが、テレワークという環境だとハードルがグッと上がります。そのような環境面の違いが影響していると考えます。

そもそも新入社員は失敗を避ける傾向があると、年々耳にするようになっています。それが数字として表れているとも言えます。これをご覧の育成担当の皆様、新入社員にはチャレンジしてもらう、みずから積極的に動いてもらう、そして失敗のなかから何かを学ぶような機会が新入社員研修では重要になってきているとあらためて感じていただけたのではないでしょうか。私どものお客様とは、2023年度の新入社員研修に向けて、テクニカル面だけではなく、このような面でも成長できるよう様々な施策を検討して、準備を進めています。

テクニカル系では「テストケースの作成力」が入っています。新入社員は配属すると、はじめはテストから担当してもらうことが多いと聴きますが、その割合が増えているのでしょうか。



一方で2022年度の割合が下がった項目1位は「タイムマネジメント」でした。3位の「報連相」とセットで考えると、テレワークの場合、タイムマネジメントは本人に任されることが多く、そして報告の頻度は以前より上がっていると言われています。テレワークのほとんどなかった2018年とは状況が違っていて、環境の違いが差になっているのかもしれません。 また「多様性」「協調性」が下がっているのも、感染リスクがあってか多くの人と関わって仕事をする機会が減り、一人で完結する仕事が多くなっているのかもしれません。仕事が振られることの多い新入社員という立場もあるかもしれないですね。

なお、テクニカル系で入ったのは「プログラミング力/ロジック構築」で、これは意外な結果でした。2018年より2022年の方がIT初学者の割合が増えているので、数値としては上がると予想していましたが、逆に下がっているのは驚きでした。インフラや運用、データ分析系など業務ではプログラミングをしない新入社員が増えており、開発でも下流工程はパートナーに任せ、マネジメントが主な業務になってきているからでしょうか。後者であれば、「テストケースの作成力」の数値が5年前から上がったことともつながります。実装はパートナーが行い、その作ったものの受け入れでテストするケースがあり、困っている新入社員が増えたという仮説が立てられます。実際、調査した会社単位で見るとプライムベンダーやユーザー企業のシステム部門の新入社員にはその傾向が見られます。興味深い数値なので、今後も注目していきたいと思います。

ちなみに2018年の「足りていないと感じるもの」のトップ3は、3位「プログラミング力」 2位「文章力」1位「ITの知識」でした。ITの知識はその後細分化して「ネットワーク」「データベース」「セキュリティ」などに分けたので本年にはない項目です。

2018年の配属後アンケートはこちら



その他こんな研修を新入社員研修でやってくれたら配属後に役立つかをフリーコメントで聞いたところ、「GitHub」「AI」「UI/UX」などの技術系が並ぶなか、もっとも多かったのは「リモート環境下での上司や先輩とのコミュニケーションの取り方/質問の仕方」でした。悩んでいる新入社員は多いようです。 また、この2年まったく見られなくなっていた「飲み会でのマナー」が入っていたことが、とても印象的でした。




Q.OJT担当者との関係性は良好ですか?(多肢択一式)



OJT担当者とは良好な関係

92%以上の新入社員が、OJT担当者との関係は良好と感じている結果となりました。良好以上を選択した理由を聞いたところ、
・気軽に話しかける空気感がある
・どんな質問でも嫌な顔をせず、しっかり回答しようとしてくれる
・心理的安全性を感じる
・正直にフィードバックしてくれて刺激になるし、たまに誉めてもらえると素直に嬉しいです
など、OJT担当者側からしっかりコミュニケーションを取っているところに新入社員は良い関係だと感じるようです。一方で「少し問題あり」以下を選択している新入社員や、「良好」を選択しながらもネガティブな理由には、
・仕事が忙しそうで話しかけにくい
・リモートワークでほとんど話す機会がない
・飲み会でしか聴けないような雑談ができていない
が挙げられていました。






Q.実際に現場で働いてみて、採用時にイメージした仕事とのギャップを感じますか? (多肢択一式)




採用時にイメージしていた仕事より良かった

95%の新入社員が、採用時にイメージしていた仕事より、実際に働いてみて良かった、イメージ通りと感じています。

  • ・和気あいあいとした職場雰囲気で、他チームの先輩社員の方とも、休憩時間や業務時間外に交流できる居心地の良さがあります
  • ・社会に影響力の大きいビジネスに関われて、モチベーション高く取り組めています
  • ・働き方の自由度も高く、それぞれが強みを活かして働ける良い環境だと感じています
  • ・想像していたより忙しいですが、仕事にやりがいを感じ、充実した日々を過ごせています
  • ・黙々とパソコンの前でコーディングしているイメージでしたが、実際はお客様やチーム内でのコミュニケーションが活発に行われています。お客様と併走しながら、システムを通してビジネスを良くしようとする雰囲気が感じられて楽しいです

などが挙げられています。


最後に ――――
BeforeコロナとWithコロナ、そしてAfterコロナへ


本年で5回目となった新入社員の配属後調査では、コロナ前の5年前と比較しながら考察した項目もあり、今回も興味深い調査結果になったのではないでしょうか。本調査結果が今後のエンジニアやIT企業で働く人々の育成の一助になれば幸いです。

現在、お客様とは2023年度の新入社員研修の企画・準備を本格的に進めております。多くのお客様が集合形式の割合を高めており、オンラインは残しながらも対面型の新入社員研修が中心になります。入社する新入社員は、学生時代の貴重な3年間をWithコロナ、そして採用もオンラインという環境で入社を迎えた方がほとんどです。Withコロナが当たり前になった環境による影響は、今回の調査結果でも触れました。そして、この記事作成時点で、5月8日からは5類相当に引き下げられることが決まっており、本格的にAfterコロナに突入します。

当たり前ですが、“働き方がコロナ前に戻る”とは考えておらず、世間では新しい働き方を模索されています。新入社員研修もコロナ前に戻るわけではなく、配属後の働き方はもちろんのこと、今後の企業の成長を担う人材の育成という視点で臨んでいく所存です。

最後になりますが、今回ご協力いただきました新入社員の皆様、育成のご担当者様には、心から御礼申し上げます。