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2018年 IT企業の新入社員向け配属後アンケート
2019.02.28
アイティ・アシストでは、私どもの新人研修を受講した新入社員を対象に、アンケートを実施いたしました。IT企業を中心に、エンジニア向けのテクニカルスキルやビジネススキルなどの新人研修を受講し、現場へ配属した新入社員の皆様に、入社しておよそ半年後の現状をご回答いただきました。
エンジニア向けのテクニカルなテーマが選択肢として多く並んでいるなか、現場ですぐに実践しなければならない「ビジネスマナー」に関する研修を、約半分の新入社員が役立っていると回答しています。
マナーについては、単に研修を受けただけでは習慣化されません。そのため私どもが研修を担当している期間中はテクニカルなテーマの間でも、講師やコーディネーターが新人の立ち居振る舞いや言動で気になる場面があれば、その場で指導するようにしています。このような継続的なフォローが役立っているという結果に表れているのかもしれません。
次に多いのが、「システム開発演習(チーム)」です。これは研修の集大成として、それまでに学んだことを活かして、架空企業の情報システムをチームメンバーと協力して開発する模擬プロジェクトの実習です。技術的なことだけでなく、「プロマネ(講師)への進捗報告がこの実習を通してできるようになった」とのコメントが多い点と、システム開発を現場では行わない基盤や運用部門などへ配属した新入社員からも役立っていると評価されている点が印象的でした。
事前に想定していた通り、配属後に足りていないと感じているのは「ITの知識」でした。現場では研修と同じ環境(開発ツール、言語、バージョンなど)で業務することは少なく、また、それぞれに求められる技術領域も異なります。さらに、顧客やその企業固有のシステムなどに携わると専門用語が必要になってきます。そのようなことが「ITの知識」が足りていないと感じる背景にあると予想しています。
加えて昨今の新入社員の属性も影響している可能性があります。以前は、理系でプログラミングの経験がある学生がほとんどだった属性が、ここ数年はIT初学者の割合が増加傾向にあります。採用では、情報系を中心に理系の学生が様々な業界からアプローチされています。今後もこの傾向は続くと思いますので、IT企業の新入社員研修は、ある程度ベースを押さえるカリキュラムが求められます。
次に足りていないと感じているのは、「文章力」でした。研修中も単純なメールをたった数行書くことにかなり時間がかかっているシーンを何度も目にしましたが、新入社員が現場でも苦労しているのがよく分かる結果です。SNSを使ったコミュニケーション(スタンプだけで成り立つ)が中心で育った新入社員にとって、メールや報告書など文章力が求められる現場は大変に感じるのかもしれません。
そして意外だったのは、次に「Office操作スキル」が入ったことです。IT企業に入る新人ですからExcelやWordなどのOffice操作は、ある程度できると思っていましたが、現実はそうではないようです。実際、入社後の成果物を見るとOffice初心者と感じる新入社員が増えています。それは関数やマクロというレベルではなく、「セルの中で改行」のような基本的な操作に関するものです。「画面では2行に見えているが、セルにカーソルをあわせたら、行間にスペースが入力されていた!」なんてことがあります。
また、このOffice操作にはショートカットなどのPC操作も含まれていると予想しています。演習中に新入社員が操作している画面や手元を見ていると、ショートカットを使わずに右クリックを使って操作するシーンをよく目にします。スマホやタブレットの進化にともない、学生のPC離れが影響しているのかもしれません。生産性向上が叫ばれるこの時代、1つのアクションにかかる時間はできる限り削減したいところです。例えば、貼付けの一連の操作でも、1日に50回行い、ショートカットを使えば3秒の短縮につながるとすると、2分以上/日削減できます。他の操作とあわせるとすぐに20-30分/日の削減につながるでしょう。年間にすると。。。
アイティ・アシストでは、数年前から入社前教育でExcelの課題を実施し、基本機能に馴れてもらうだけでなく、ショートカットキーの必要性と作業がラクになるショートカット一覧を紹介して、積極的な活用をすすめています。
お客様によって実施している研修の内容や施策が異なるため、単純比較はできませんが「このような研修があったら、配属後に役立つ研修(自由入力式)」という質問に対して、やはり多かったのは、Excelを中心とした「Office操作スキル」を望む声でした。私どものお客様の多くのIT企業で、設計書や仕様書をExcelで作成しているというのも、その声の背景にあるのかもしれません。とにかく現場でOffice操作に苦労している新入社員が多いことは、ここにも表れています。
次に目立ったのは、「テストケース」です。新入社員が現場配属後に担当することの多いテストについて、テストケースを作成する研修を実施、もしくは増やして欲しいという声がありました。これもIT企業ならではのアンケート結果です。
他には少数ですが「アジャイル開発」の研修を望む声が出てきています。これは配属する現場にアジャイル開発の導入が増えている背景からでしょう。私どもでも、アジャイル開発の研修は増えてきており、19年度の新入社員研修から初めて導入される企業も出てきています。
その他、目についたものとしては「UI、UX」「JavaScript」「開発ツール類」「インフラ系」などの技術系です。なかには「必要な資料を見つける演習」「Googleの検索力」のような意見もありました。
90%以上の新入社員が、OJT担当者との関係は良好と感じている結果となりました。なぜ、そのように感じているのか理由を聞いたところ、
など、OJT担当者としっかりコミュニケーションが取れていると新入社員は良い関係だと感じるようです。一方で「少し問題あり」以下を選択している新入社員や、「良好」を選択しながらもネガティブな理由には、
が挙げられていました。OJT担当者は、通常の業務を抱えて忙しいなかでも、新入社員にはある程度気をつかわないと印象が悪くなるようです。
30.6%の新入社員が、採用時にイメージしていた仕事より、実際に働いてみて良かったと感じています。その理由は、
などを挙げています。
一方で、イメージより悪かったと回答しているのは15.7%でした。その理由は、
などを挙げています。
今回はアイティ・アシストとして、初めて実施した新入社員の配属後アンケートでした。配属後アンケートとして、対象者がIT企業および一般企業のIT部門に限られているのは、今回のこの結果が初めてだったかもしれません。今後のエンジニアやIT企業で働く人材の育成の参考になれば幸いです。ご協力いただきました新入社員の皆様、育成のご担当者様には、心より御礼申し上げます。
私どもとしては、今回のアンケート結果をもとに2019年度へ向けた研修コンテンツのブラッシュアップを図っています。また、アンケートを今後も継続していくことで、お客様の経年変化や、研修や採用が及ぼす効果を分析できるデータになると思っています。その分析結果をもとに、新たな仮説を立て、その後の研修や採用、人材育成方法に反映させていく所存です。