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2020年 IT企業の新入社員向け配属後調査

2021.02.19


アイティ・アシストでは、私どもの新人研修を受講したIT企業の新入社員を対象にアンケート調査を実施いたしました。本年で3年目になります。
2020年の新入社員研修は、新型コロナの影響でどの企業もオンラインに切り替えて実施いたしました。また、配属後もリモートワークを取り入れている企業ばかりです。これまでとは異なるニューノーマルな学び方と働き方になった新入社員は、配属されて何を思うのでしょうか。配属して約3ヶ月後の状況をご回答いただきました。


≪調査概要≫

  • 調査期間:2020年10月5日~2021年1月13日
  • 調査方法:選択式/自由入力式
  • 調査対象:アイティ・アシストの研修を受講した2020年度入社の新入社員
  • ご協力いただいた企業:13社
  • 対象企業規模(社員数):
    ~  300名 4社
    300名 ~ 1,000名 5社
    1,000名 ~ 2,000名 1社
    2,000名 ~      3社
  • 対象者:469名 有効回答354名(75.5%)

 



Q.配属後に役立った研修を教えてください。(複数選択式)



現場では“意外にも”ビジネスマナーで学んだことがもっとも役立っている

本年もっとも役立っていると回答があったのは「ビジネスマナー」でした。私どもが配属後アンケート調査を開始以来、「システム開発演習(チーム)」が2年連続1位だったのですが、はじめて「ビジネスマナー」が1位に。それもダントツの52.8%で、次点の「プログラミング」27.4%の約2倍と、2人に1人が「役立った」と評価しています。
“意外にも”と付け加えたのは、ビジネスマナーも本年はオンラインで実施しているからです。ビジネスマナーといえば、挨拶や名刺交換、電話応対などをイメージされる方も多いはずです。もちろん、オンラインでも電話応対などはインタラクティブな演習形式で実施しました。ただ、挨拶や名刺交換など体を動かすものは講師の見本や動画での確認になり、教育提供側からするとオンラインだと効果が下がった可能性のあるテーマの一つと捉えていたのです。

仮説ではありますが、私どものセミナーでは、「オンラインでの立ち居振る舞い」が含まれているところが評価につながった可能性があります。オンラインで良い印象を与えるポイント(パネル、表情、リアクション)やマナー、オンラインでの話し方・聴き方、オンラインツールの設定方法など、現在のリモートワーク環境下で役立つ立ち居振る舞いを指導した点が評価されているのかもしれません。実際「配属後のテレワークで役立っている」「先輩からWebミーティングのホストを任される」「オンラインスキルが身に付いた」のようなコメントを頂戴しています。

他には「メールの書き方」とコメントする方が多かったので、リモートワークにおいて文章でのやり取りが増加傾向になる背景が「ビジネスマナー」が役立ったとの評価になったと考えています。

次に「プログラミング」が入りました。
オンラインセミナーとプログラミングの相性はよく、対面形式で実施するよりもオンラインの方が各種テストの得点アップにつながりました。Javaの場合、受講者のEclipseの画面を共有して、講師がレビューする進行が簡単にできるのはオンラインならではです。また、簡単に答えられる問題は全員にチャットを使って回答してもらったり、スタンプで投票してもらったりと頻繁に理解度確認できるところも学習効果を高めました。

3位は昨年2位の「データベースSQL」でした。

このようにオンライン形式で実施した本年は、昨年までと上位にくるテーマは同じですが、割合が異なる結果となりました。昨年と10%以上の差が生じたのは「ビジネスマナー」(+17%)「システム開発演習(チーム)」(-15%、4位)の2つです。ビジネスマナーは前述の通りです。「システム開発演習(チーム)」がここまで下がったのには2つ理由があります。

(1)システム開発演習を受講しない方の割合増
今回担当した企業では、インフラや運用、営業の方も受講されており、途中から他のコースや配属になる方々も含まれています。アンケート調査に回答してくださった企業のその方々の割合が増えたこともあり、数値に影響したと考えます。

(2)オンラインで実施した企業は昨年より20%を越える下げ
システム開発演習を実施する6月以降にはオンラインから集合形式に戻す企業が出てきました。集合形式でシステム開発演習を実施した企業では、昨年とほぼ同じかそれ以上の割合で役立ったと出ていたのですが、オンラインで実施した企業では、昨年より20%を超える下げとなりました。やはり、システム開発演習(チーム)は、集合形式で実施した方が様々な学びがあることが、この数値にも表れていると思います。

2019年の配属後調査はこちら



なお、アイティ・アシストが施策として取り組んでいる「自主運営」(お客様によっては研修運営プロジェクトと呼ぶ)が役立ったと11.9%の手があがりました。この施策は新入社員に研修運営を任せることで、講師やコーディネーターのフィードバックを通して、マナーや仕事の進め方を身に付けていただく施策です。本年はオンラインということで、実施しなかった企業もあり、実際に取り組んだのは全体の6割ぐらいでしたが、それでも全体で1割の方が評価いただいているのは嬉しい限りです。




Q.配属後、自分に足りていないと感じるものは何ですか?(複数選択式)



「文章力」が足りていない

「文章力」が2年連続トップになりました。やはり現場で文章を書くことに苦労しているのが結果として表れています。子どもの頃からSNSを使った(スタンプだけで成り立つ)コミュニケーションが中心で育った新入社員にとって、メールや議事録など文章力が求められる現場は大変なのでしょう。また、リモートワークによって、文章によるコミュニケーションが増加傾向にあることも後押ししているのでしょう。最近ではチャットを導入している企業も多く、ツールにあわせた文章力が求められます。そのような背景からか、配属後も私どものビジネス文書(議事録や報告メールなど)の添削サービスを利用されるお客様が増えているのもうなずけます。

担当者向け文章力強化についてはこちら



次に足りていないと回答があったのは、昨年同様「プログラミング力」でした。
前項でプログラミングは得点アップと言いましたが、現場レベルのプログラミング力にはまだまだスキルアップが必要でしょう。IT初学者の採用が増えている現状では、約3カ月間の研修期間で基礎を身に付けるところまでです。現場での先輩による指導、勉強会の開催、自己学習によってプログラミング力の向上を図っていただければと思います。

昨年比で比較すると、オンラインに変わったからといってテーマや割合に大きな変化がなかったのが、本年の特徴でした。私どものオンラインセミナーは、講師が説明に終始して一方向になるような進行は極力行わず、対面形式よりもむしろ双方向性を高めた進行を行っております。そのような進行の工夫もあってか、例年通りの教育をご提供できたのが、この結果につながったのかもしれません。

ITアシストのオンラインセミナーの詳細はこちら





Office操作スキル、先輩とのコミュニケーションを(もっと)やって欲しかった

「このような研修があったら、配属後に役立つ(自由入力式)」に対して、やはり多かったのは、「Office操作スキル」を望む声で、3年連続1位でした。アンケート調査の対象がIT企業で、設計書や仕様書をExcelで作成しているというのも、その声の背景にあるのでしょう。
現場ではリモートワークが増える傾向にあり、各種操作スキルを知らないと生産性を下げる可能性もあるため、今後は新入社員研修のなかでも「Office操作」を取り上げる必要が出てきているのかもしれません。
私どもでは、一部のお客様で入社前教育としてOffice操作の簡単レクチャーとExcelのインターバル課題を出して、基本機能をマスターしてもらうようにしています。あわせて、ショートカットキーの一覧を配り、日頃から利用するようにして定着させることを勧めています。

次に目立ったのは、昨年から増えていた「上司や先輩とのコミュニケーション」を望む声です。これもリモートワークの影響からか、“リモートワーク中の”先輩への「質問や報告の仕方」、「雑談の仕方」に困っているようです。なかにはお客様との「リモート会議の進め方」や「リモート営業」などを希望する声もありました。

その他、目についたものとしては「インフラ」「Linux」「AWS、Azure」「JavaScript」などの技術系です。配属先がアプリケーション開発でもインフラやクラウドの技術が必要になってきている、案件が小型化していてフルスタック型のエンジニアが求められているといった背景があるのではないでしょうか。




Q.OJT担当者との関係性は良好ですか?(多肢択一式)



OJT担当者とは良好な関係

昨年同様、86%以上の新入社員が、OJT担当者との関係は良好と感じている結果となりました。そのように感じているのか理由を聞いたところ、

  • ・質問しやすい雰囲気を作ってくれている
  • ・テレワークでも丁寧に指導してくれる
  • ・相談にのってくれる

など、OJT担当者としっかりコミュニケーションが取れていると新入社員は良い関係だと感じるようです。一方で「少し問題あり」以下を選択している新入社員や、「良好」を選択しながらもネガティブな理由には、

  • ・先輩が忙しそうにしているので質問しづらい
  • ・テレワークであまり話す機会がない
  • ・年上とどのようにコミュニケーション取ったらよいかわからない

が挙げられていました。

前述の通り、新入社員で「上司や先輩とのコミュニケーション」に困っている方は増えています。アイティ・アシストでは、OJT担当者と新入社員が一緒に受講するペア研修を実施してコミュニケーションが取りやすい関係から築いています。研修の場を利用して、お互いのことを知ってもらい、その後のOJTを効果的なものにしていくことが目的で、毎年実施するお客様が増えています。特にリモートワークが増えた本年は導入されるお客様が増えて、本来であればできた業務外での会話や雑談を補い、お互いの関係を深める貴重な機会としています。普段はなかなか話せないテーマでディスカッションしてもらったり、お互いでOJTのルールを決めたり、OJT計画書をブラッシュアップしたりする研修なのですが、アンケート調査には両者から多数の感謝のコメントをいただきます。
「テレワークで話す機会が取れなくて不安だったので、この機会に相手の考えやキャラクターが分かって距離が近くなった」「質問の方法やOJTの進め方、自分でチャレンジしたい目標などを先輩と話して決められたのは大きい」「先輩が新人指導に悩んでいるなんて思ってもいなかったので驚いた。関係が深まってうまく進められそう」など

OJTペア研修についてはこちら




Q.実際に現場で働いてみて、採用時にイメージした仕事とのギャップを感じますか? (多肢択一式)




採用時にイメージしていた仕事より良かった > 悪かった

87%の新入社員が、採用時にイメージしていた仕事より、実際に働いてみて良かった、イメージ通りと感じています。

  • ・仕事にやりがいや楽しさを感じられている
  • ・先輩社員がやさしくてフォローしてくれる
  • ・少しずつ仕事を任せてくれるようになった
  • ・新人でも意見を求められ、それを受け入れてくれる
  • ・テレワークの対応が早かった

などがその理由です。

一方で、イメージより悪かったと回答しているのは13.0%でした。こちらは昨年よりやや上がりました。

  • ・残業は少ないと聞いていたが、毎日のように残業している
  • ・コロナの影響もあるかもしれないが、先輩たちとの会話が少ない
  • ・配属先の業務が自分の希望のものではなかった
  • ・プログラミングをガリガリやるものと思っていたが、文章を書く機会の方が圧倒的に多い
  • ・こんなにテレワークばかりになると思っていなかった

などが挙がっています。

 

本年で3年目となった新入社員の配属後アンケート調査では、オンラインと対面との違い、新型コロナによるニューノーマルな働き方の影響など、興味深い結果となったのではないでしょうか。本アンケート調査結果が今後のエンジニアやIT企業で働く人々の育成の参考になれば幸いです。

本年度のオンラインセミナーを受講した新入社員は、先輩よりリモートワークに抵抗なく、さらにオンラインの立ち居振る舞いは先輩以上と、まさに“オンライン第一世代”と言えるでしょう。新型コロナが終息しても「リモートワークはなくならない」と各所で言われています。移動時間や交通費・会場費の削減によって、その分の時間や費用を他のことにかけることができ、仕事の生産性向上につながるからです。営業の方であれば、以前は午前中に1社しかできなかったお客様との商談打合せが、今はオンラインで3社が可能になったのです。
人は変化を嫌います。先輩がこの大きな変化に苦労するなか、これが常態である新入社員が今後の働き方を変えていくキーパーソンになるかもしれませんね。

私どもとしては、今回のアンケート調査結果をもとに2021年度へ向けた研修カリキュラムおよびオンライン形式でのコンテンツのブラッシュアップを図っています。2021年度は、すべてオンラインで検討を進めるお客様もいらっしゃれば、オンラインと対面のハイブリッド型で検討を進めているお客様もいらっしゃいます。いずれにせよ、1,000回を超えるオンラインセミナーの経験と本アンケート調査を参考に、新たな学び方を私どもから提案していく所存です。

最後になりますが、今回ご協力いただきました新入社員の皆様、育成のご担当者様には、心から御礼申し上げます。