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2023年IT企業の新入社員向け配属後調査

2024.02.06


アイティ・アシストでは、私どもの新人研修を受けたIT企業の新入社員を対象にアンケート調査を行い、配属後に役立った研修や自分に足りていないと感じるもの、採用時にイメージした仕事とのギャップなどを伺いました。
2023年度の新入社員研修は、新型コロナが5類移行に伴い、対面形式が増えるなか、オンライン、ハイブリッドと様々な形式で実施いたしました。その研修終了後、配属約3ヶ月後に新入社員の皆さんから各種状況をご回答いただきました。


≪調査概要≫

  • 調査期間:2023年10月2日~2024年1月9日
  • 調査方法:選択式/自由入力式
  • 調査対象:アイティ・アシストの研修を受講した2023年度入社の新入社員
  • ご協力いただいた企業:15社
  • 対象企業規模(社員数):
    ~  300名 3社
    300名 ~ 1,000名 7社
    1,000名 ~ 2,000名 1社
    2,000名 ~      4社
  • 対象者:609名 有効回答387名(63.5%)

 



Q.配属後に役立った研修を教えてください。(複数選択式)



4年連続”ビジネスマナー“がもっとも役立っている

新入社員研修の効果を振り返ると、もっとも役立っていると評価されたのは「ビジネスマナー」で、これは4年連続の結果です。
それ以前は「システム開発演習(チーム)」が連続1位だったのですが、コロナ禍後はビジネスマナーが毎年1位になっています。回答率は54.0%と2人に1人が「役立った」と評価しています。

就職活動中はまだ新型コロナの影響を受けており、オンライン中心であったこともあり、本来なら会社訪問時に様々な機会で学ぶマナーについて、新入社員研修で初めて学ぶことになったのが背景にあるのでしょう。配属後に出社する機会が比較的に多い新入社員は、研修で学んだマナーを現場で役立ててくれているようです。

次には「データベース(SQL)」と「プログラミング」の研修も新入社員にとって重要であり、特に「データベース(SQL)」は前回より7%以上の増加を見せています。新入社員が配属後の現場でデータベースに触れる機会が多いことが表れているとともに、私どもが担当する企業において、IT初学者の割合は年々増えている背景もあるのかもしれません。

「システム開発演習(チーム)」は実施していない企業もアンケート対象にあるなか、5番手と上位に挙がっています。やはりチームメンバーと協力して、ひとつのシステムを作り上げる開発のプロセスは、現場でも活かされているようです。

その他、本年度も評価が高いのは「研修運営プロジェクト」です。 22.2%とこちらもすべての企業で実施している施策ではありませんが、トップ7に入りました。「研修運営プロジェクト」は、新入社員が研修の運営に実際に関わることで主体性や効果的な仕事の進め方を学ぶ、当社独自の効果的な施策です。本年も対面、オンライン、ハイブリッドと様々な形式のなか研修運営プロジェクトに取り組んでもらい、育成担当者やコーディネーターからのフィードバックを通して、成長する姿が見られました。

2022年の配属後アンケートはこちら




Q.配属後、自分に足りていないと感じるものは何ですか?(複数選択式)



5年連続“文章力”が足りていない

配属後に新入社員が自分に足りていないと感じるのは「文章力」で、5年連続トップになっています。やはり現場で文章を書くことに苦労している新入社員が多いようです。SNSを使った(スタンプだけで成り立つ)コミュニケーションで育った新入社員にとって、メールや議事録、設計書など様々な場面で文章力が求められるITの現場は大変なのでしょう。さらにテレワークの普及に伴い、遠隔での効果的なコミュニケーションを行うためには、明確で理解しやすい文章能力がますます重要になっています。最近ではチャットを導入している企業も多く、ツールにあわせた文章力が求められています。
この問題に対応するため、多くの企業が私たちのビジネス文書添削サービスを利用し、新入社員の実践的な文章力向上を目指しています。

文章力(担当者向け)※添削あり



続いて、新入社員から不足していると指摘されたスキルは「質問の仕方」で、これはテレワークの浸透により昨年から3%以上増加し、37.5%で2番目に多かったです。新入社員の3人に1人が質問の仕方がまだ足りていないと感じています。
ただし、よく分析してみると会社によって大きなバラつきがあることが分かりました。新入社員研修後にOJT担当者と新入社員が一緒に受講する“OJTペア”研修を実施している会社と実施していない会社で差が生じていることが分ったのです。企業規模や新入社員の人数などがある程度似通った6社の結果がこちらになります。


OJTペア研修の実施有無によって2倍以上の差が出ることに驚きました。そのOJTペア研修は、OJT担当者と新入社員が一緒に受けるもので、主に関係構築、スキルセット共有、指導方法、目標設定に焦点を当てています。新入社員のアンケートには
「先輩は忙しいので、この研修内で多くの話ができてとても助かった」
「先輩と気兼ねなく質問できる関係が気付けて良かった」
「報連相のタイミングや方法を共有できたので、これからの不安が一つ解消された」
など感謝の声が多数挙がります。
このように、OJTペア研修を通じて両者の関係構築と約束事の設定が心理的安全性を高め、新入社員の不安を軽減につながっています。OJTがあまりうまくいってない、新人の離職が多いなど課題感をお持ちの方はこちら

新人と一緒に受けるOJTペア




5年前との比較


それではここで、5年前の配属後の調査結果と現在の結果を比較してみましょう。本年度と2019年度の「足りていないと感じるもの」について、増減が大きかった項目を比較し、時間の経過による変化を探ります。ちなみに2019年度は、まだ新型コロナの影響がなく、令和改元とラグビーW杯日本大会があった年です。この比較から、過去5年間での変化がどのように新入社員の感じ方に影響を与えているかを見ていきましょう。


2023年度において特に「足りない」と感じられた項目は「ビジネスマナー」、「プレゼンやヒアリングなどのビジネスコミュニケーション」、「段取り力」、「質問の仕方」となります。
なかでも「ビジネスマナー」「プレゼンやヒアリングなどのビジネスコミュニケーション」は、定着するにあたって、ある程度の場数が必要になります。テレワークから出社へと出勤比率が上がる傾向の企業が多いなか、新入社員は現場でマナーやコミュニケーションする機会を通して、トレーニングがまだ足りていないと感じているようです。


一方で2023年度の割合が下がった項目で大きな差が出たのは「プログラミング力/ロジック構築」でした。この傾向は、インフラや運用、データ分析などの業務でプログラミングが不要な新入社員が増えたこと、また開発業務でも下流工程の外部委託が増加し、マネジメント業務が重視されるようになったことが影響している可能性があります。同時に、「インフラ」と「テストケースの作成力」のスキル要求が5年前と比較して上昇しているのは、業務内容の変化を反映していると考えられます。これらの興味深い数値変化を踏まえ、今後も継続的にスキル要求の動向を注目していく必要があります。

ちなみに2019年度のデータでは、最も足りないと感じられたスキルは「文章力」で、続いて「プログラミング力/ロジック構築」と「質問の仕方」が挙げられていました。


2019年の配属後アンケートはこちら



その他、新入社員が配属後に役立つと考える研修内容についてフリーコメントで意見を集めた結果、「生成AI」「GitHub」「PowerAutomute」などの技術系が並ぶなか、もっとも多かったのは「リモート環境下での上司や先輩とのコミュニケーションの取り方/質問の仕方」でした。OJTペア研修を未実施の会社を中心に望む声が挙がっています。
あと、この3年まったく見られなくなっていた「電話応対の応用編」を望む声があったのは、とても印象的でした。なかには「設置された電話機自体の各種機能を教えて欲しい」とあり、スマホで育った世代の切実な声かもしれないですね。




Q.OJT担当者との関係性は良好ですか?(多肢択一式)



OJT担当者とは良好な関係

アンケート結果によると、88%以上の新入社員がOJT担当者との関係を良好と感じています。良好以上を選択した理由を聞いたところ、
・案件以外の業務タスク状況などを気にかけてくれており、非常に話しやすい、相談しやすい、関わりやすい関係を持てている
・毎日ミーティングする時間を取ったり、出社したときは一緒の席に座ったりなどしてコミュニケーションを取る時間を多くとっている
・何か質問しても業務で忙しいにもかかわらず、手を止めて対応してくださり、とても感謝しています
・自分の成長や弱点があれば、褒めていただいたり、明確に指摘をしてくださり、いい点も悪い点も言ってもらえる環境が嬉しい
など、OJT担当者側からしっかりコミュニケーションを取っているところに新入社員は良い関係だと感じるようです。一方で「少し問題あり」以下を選択している新入社員や、「良好」を選択しながらもネガティブな理由には、
・仕事が忙しそうで話しかけにくい
・あまりコミュニケーションを良好にとれていない印象がある
・教えていただける時間が少なく、その状況のため質問しづらい状況が発生している
が挙げられていました。これらの結果から、OJTの効果を最大化するための改善点が見えてきます。




Q.実際に現場で働いてみて、採用時にイメージした仕事とのギャップを感じますか? (多肢択一式)




採用時にイメージしていた仕事より良かった

94%以上の新入社員が実際に働いてみて、採用時に持っていた仕事のイメージが良かったり、イメージ通りだったりすると感じています。

  • ・想像していたよりも自身の身の丈に合った仕事からさせていただいている
  • ・一緒に働く同期はもちろん、先輩方も温厚かつ的確性を持っている人が多いためコミュニケーション面が充実している
  • ・想定していたよりも裁量が大きく、様々なことに挑戦できる環境が整っていた
  • ・想像していたより忙しいですが、仕事にやりがいを感じる日々を過ごせています
  • ・一日中コードを書き続けて疲労困憊するイメージでいましたが、実際はそのような孤独な作業ではなく、同期や先輩社員とコミュニケーションを取りながら仕事を進めていけ、とても充実しています

これらのポジティブなフィードバックは、新入社員が職場環境や業務内容に対して高い満足度を感じていることを示しています。




最後に ――――
Afterコロナ時代の新人育成


コロナ前の状態に単に戻るのではなく、新たな働き方と融合するなかで行われた2023年度の新入社員の配属後調査は、非常に興味深い結果をもたらしました。この調査結果が今後のエンジニアやIT企業で働く人々の育成の一助になれば幸いです。

2024年に入社する新入社員はいわゆる“フルコロナ世代”で、大学入学時から3年にわたって新型コロナの影響を受けた世代が中心になります。彼らは採用面接で大学時代の経験よりも高校時代のエピソードを多く語る傾向があると聴いています。この世代を迎えるにあたり、私たちは研修カリキュラムや指導方法、施策などについてお客様と共に企画・準備を進めており、新たな働き方に適応するための対策を講じています。

Afterコロナ時代に入り、変化する働き方に適応する新入社員の育成環境の重要性を一層認識し、これからも効果的な研修プログラムの提供に努めてまいります。そして、新入社員たちが迅速に変化するビジネス環境に適応し、成長するためのサポートを提供していきます。

最後に、今回の調査にご協力いただいた新入社員の皆様、そして育成を担当された方々へ、心からの感謝を申し上げます。