2025年IT企業の新入社員向け配属後調査
アイティ・アシストでは、私どもの新人研修を受講したIT企業の新入社員を対象にアンケート調査を実施しました。調査では、配属後に役立った研修内容や、自分に足りていないと感じるスキル、採用時の仕事イメージとのギャップ、OJT担当者との関係性などを伺っており、今回で8年目となります。
2025年度の新人研修は、対面形式の研修が基本となりつつ、研修科目に応じてオンラインやハイブリッド形式も取り入れ、多様な形で実施しました。研修終了後、配属から約3ヶ月が経過したタイミングで、新入社員の皆様に現状についてご意見をいただいております。
IT企業複数社向けに実施している貴重な調査となっておりますので、採用活動や研修企画、配属後フォローの見直しなどでお役に立つことができれば幸いです。ぜひご覧ください。
≪調査概要≫
- 調査期間:2025年10月1日~2026年1月20日
- 調査方法:選択式/自由入力式
- 調査対象:アイティ・アシストの研修を受講した2025年度入社の新入社員
- ご協力いただいた企業:14社
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対象企業規模(社員数):
~ 300名 3社
300名 ~ 1,000名 6社
1,000名 ~ 2,000名 1社
2,000名 ~ 4社 - 対象者:694名 有効回答446名(64.2%)
Q.配属後に役立った研修を教えてください。(複数選択式)
6年連続”ビジネスマナー“がもっとも役立った
配属後にもっとも役立った研修として、6年連続で「ビジネスマナー」が選ばれました。回答率も60.8%と過去最高で、コロナ禍以降の配属後アンケートの中で初めて6割を超える結果となりました。
現在、就職活動や内定者期間のやり取りはオンラインの比率が高く、企業訪問や面接を通じてマナーを学ぶ機会が限られてきました。そのため、新入社員研修の中で初めて体系的にビジネスマナーを学ぶケースが増えていると考えられます。
配属後、出社する機会が多い新入社員にとっては、特に役立ったテーマであることが今回の結果からも読み取れます。
次点以降は、技術系が上位に並びました。IT初学者の割合は年々増えている背景もあり、「プログラミング」「システム開発」の研修に続き、新入社員が配属後の現場で触れる機会の多い「データベース」が挙がりました。
実施企業が限られる中でも、「開発プロジェクト演習(模擬開発演習)」は5位にランクイン。チームでの開発や進捗管理、メンバーとの課題共有など、配属後の実務において活かされている研修であることが分かります。
また、アイティ・アシスト独自施策である「研修運営プロジェクト」も21.1%の回答率で上位に入りました。配属後は「手順通りにこなす」だけでなく、新人みずからが主体的に業務に取り組み、段取りから周囲を巻き込んで相談する動きが必要になります。研修中に自分たちで自主的な運営を経験したことで、配属後の戦力化が早くなる—そんな構図が調査から伺えます。
Q.配属後、自分に足りていないと感じるものは何ですか?(複数選択式)
7年連続で “文章力”がもっとも不足している
配属後、新入社員が自身のスキル不足としてもっとも多く挙げたのは、今年も「文章力」で35.0%の回答率でした。この結果は7年連続で同様となっており、ITの現場における文章作成の難しさが、依然として大きな課題であると考えられます。文章に関する具体的な悩みを記した個別コメントも複数見られました。
- 何を書けばよいのか分からず、手が止まってしまう
- 要点をまとめたつもりでも、修正が入ることが多い
- 相手にどう伝わるか不安で、文章作成に時間がかかる
学生時代のSNSやチャットでの簡易的なやり取りとは異なり、配属後はメール、議事録、報告書、設計書など、正確さと分かりやすさが求められる文章を書く場面が一気に増えます。そのギャップに戸惑う新入社員が多いことが、今回の結果からも読み取れました。
ただし、昨年から8%下がっています。生成AIが現場でも本格的に使われ始めており、それによる文章作成の負担軽減があったのかもしれません。このあたりの影響は次年度以降も注視していきたいと思っています。
こうした結果を受けて、多くの企業では私どもの「ビジネス文書添削サービス」を利用し、新入社員の実践的な文章力向上を図っています。ITの現場でよくあるシーン(IT用語が飛び交う会議の議事録、システムトラブル報告など)での文章を書いてもらい、それを一つひとつ講師が添削やアドバイスコメントを入れて、個人ごとに返却するサービスです。
続いて不足していると挙がったのは「質問の仕方」で、34.5%と1位と僅差の回答となりました。質問力を高めるには、最近では起きている事象に対して、「解像度を上げる」必要があると言われています。経験が少ない新入社員が事象をしっかり掘り下げて、効果的な質問に結びつけるところに課題を感じているのかもしれません。
3番目に挙がった「プログラミング/ロジック構築」は、33.2%と毎年一定の割合で不足感が示される項目です。
研修を通じて基礎的な理解は進んでいるものの、配属後の実務では既存コードの読解や仕様を踏まえた実装など、より実践的な力が求められます。そのギャップが、不足感として表れていると考えられます。IT初学者が増えている状況も踏まえると、これは学習が進んでいるからこそ生まれる課題とも言えるでしょう。
また、新入社員が配属後に役立つと考える研修内容についてフリーコメントで意見を集めたところ、もっとも多かったものから順にExcel(39件)、業務理解・設計(18件)、テスト・レビュー(15件)となりました。
ExcelはPC操作スキルの一部にとどまらず、業務の生産性を左右する重要な要素の一つです。特にスマートフォン操作に慣れた世代の新入社員にとっては、業務で実際に使う機能を体系的に学ぶ機会が不可欠と言えるでしょう。そのため研修ではもちろん、内定者教育の段階で、この調査結果を利用して、自己学習を促している企業が増えています。
Q.OJT担当者との関係性は良好ですか?(多肢択一式)
OJT担当者とは良好な関係
アンケート結果によると、93%の新入社員がOJT担当者との関係を「良好」と感じています。良好以上を選んだ理由としては、次のような声が挙がりました。
- フィードバックが迅速かつ的確、成長のために考える機会も与えてくださる
- 毎日タスクを確認して、双方で進捗の相違がないようにコミュニケーションを取っている
- 週1回、30分ほど時間をいただき、業務の不安を解消する機会が設けられている
- 関係性が良く、仕事の内容だけでなくプライベートの話も気軽にできる
- 「分からないことあったら何でも聞いて」を声かけいただき、気がねなく質問できている
これらの回答から、OJT担当者が積極的にコミュニケーションを取る姿勢が、新入社員との良好な関係構築につながっていることがわかります。
一方で、「少し問題あり」以下を選んだ新入社員や、「良好」を選びつつも課題を感じている声には、以下のようなものがありました。
- OJT担当者が多忙で質問や相談のタイミングを伺ってしまい、気軽に声をかけづらい
- 在宅勤務が中心のため、対面でのコミュニケーション機会が少なく、距離を縮めにくい
- OJT担当者と同じ案件・現場で働いていないため、業務の細かい背景を共有しづらい場面がある
これらの結果から、OJTの効果を最大化するための改善点が見えてきます。一部には、「もっと気軽に雑談できる機会があればよかった」「業務以外のコミュニケーションも取りたかった」といった意見もあり、新入社員は業務以外の関わりを望んでいない、と一概には言えないことも示されています。
重要なのは、距離感や関わり方を一律に決めるのではなく、新人一人ひとりの状況や希望に応じて関係性を調整できる余地を残しておくことかもしれません。
Q.実際に現場で働いてみて、採用時にイメージした仕事とのギャップを感じますか? (多肢択一式)
採用時にイメージしていた仕事より良かった
実際に働いてみて、96%以上の新入社員が採用時にイメージした仕事より良い、またはイメージ通りだったと回答しています。
- 事前に聞いていた仕事内容や配属先の説明と、実務に大きな差がなく、安心して取り組めている
- 採用時の説明や面談で聞いていた内容が具体的だったため、入社後のギャップを感じにくかった
- 配属後すぐに簡単な業務から段階的に任せてもらえ、イメージしていた働き方に近い形でスタートできた
- 想像していたよりも周囲のサポートが手厚く、働きやすい環境だと感じている
- 研修や配属前の説明で、仕事内容だけでなく職場の雰囲気もある程度想像できていた
これらの声からは、採用段階での情報提供やコミュニケーションが、配属後の納得感や安心感につながっている様子がうかがえます。
最後に ――――
変化する世代にあわせた育成のアップデート
2025年入社の新入社員は、高校3年生から大学2年生という、多感で人生の記憶に強く残る時期をコロナ禍で過ごしています。高校の集大成となる行事や大学入学後の友人作りが制限され、「当たり前の青春」を充分に経験できなかった世代とも言えます。この経験は、彼らの価値観や人との関わり方に少なからず影響を与えています。
また、就職活動は超売り手市場で、企業から「選ばれる」よりも「選ぶ」経験をしてきた世代であり、無理な我慢や理不尽さに対する耐性は高くありません。さらに、ドラマ「不適切にもほどがある」が話題になるほど、企業側がコンプライアンスや言動リスクを強く意識し、指導や注意、フィードバックに対して慎重になっています。
その結果、研修や現場では新入社員へ気をつかってしまい、本来であれば成長の糧となるはずの指摘や助言が控えられ、新入社員は「失敗から学ぶ機会」「軌道修正される機会」を失っていると聞くことがあります。これは本人にとっても、組織にとっても大きな損失です。
加えて、生成AIの利活用が進み、新入社員は疑問をまずAIに確かめる行動が一般化しています。すぐに回答が得られる一方で、講師や先輩社員への質問や対話を通じて考えを深める機会は減少します。結果として、表面的には自己解決できているように見えても、試行錯誤や仮説を立てる過程を経験しないままで、本質的な成長につながらないリスクが生じています。
こうした環境変化を踏まえ、アイティ・アシストでは新入社員と指導側の双方が安心して成長できる研修設計へと進化させてきました。新入社員には「試行錯誤してよい」前提を、講師や先輩社員には「適切なフィードバックは成長につながる」という共通認識を持ってもらうよう重視しています。そのうえで、対話を通じて考え方を深掘りし、AIの回答を前提に「なぜそう考えるのか」を言語化させる問いを増やすことで、理解の解像度を高めるようにしています。
売り手市場、コンプライアンス重視、技術革新という時代背景の中で、新入社員の成長機会をどう守り、どう広げるか。私たちは年々変化する新人世代に合わせて、研修の在り方そのものをアップデートし続けています。この調査結果が今後のエンジニアやIT企業で働く人々の育成の一助になれば幸いです。
最後に、今回の調査にご協力いただいた新入社員の皆様、そして育成を担当された方々へ、心からの感謝を申し上げます。



